「会話をしていても、いつも”話が飛びすぎ”と言われる」
「一方的にバーっと話してしまい、何の話をしているのか分からなくなる」
「上司に”要点をまとめて話して”と言われるが、上手くまとめられない」
周りの人との会話を楽しめず、同僚からも避けられ自己嫌悪。
ADHDの特性を持つ皆さん、「自分のせいで会話を楽しめない」とご自身を責めていませんか?
今回は、ADHDの特性を持ち話し方に悩むみなさんが、ラクに会話を楽しむためのコツをご紹介いたします。
そう落ち込んでいませんか?
大丈夫、みなさんだけではありません。
ADHDの特性を持つ方は、その“特性“がゆえに話し方で悩んでいる方が多いと言われています。
私も少ながらず悩みました。
お客さんとの会話中、頭の中にどんどんアイディアが思い浮かんでは一方的に伝える。
「空気読めないな!」
と何度も注意されたことも。
周りの人々が上手く会話をしている様子を見ては、落ち込んでしまいますよね…
「自分はダメ人間なんだ…」「改善する努力が足りないんだ」と。
でも、決してダメ人間ではありません。
そしてあなたの努力が足りないわけでもない。
(むしろ十分努力しています!)
原因はADHDの特性、つまり「脳の情報処理」の問題。
そしてこれは、ちょっとした改善方法で乗り越えることができるのです。
今回の記事では、
・ADHDの話し方の原因となっている「脳の情報処理」の問題について
・テクニックに頼らずに会話を楽しむための改善策
これらの内容について解説🌷
「自分の話し方が悪いから、周りと楽しく会話ができないんだ」と落ち込む方が、
「自分が原因ではなかった!」と前向きな気持ちで改善策を試していただけますと嬉しいです!
あなたのせいじゃない|ADHDの話し方の原因は「脳の情報処理のクセ」だった
ここでは、ADHDの特性を持つ方が「上手く会話ができない」と悩む原因についてお伝えいたします。
原因として考えられるのは以下の3つ。
①前頭前野の機能の弱さ
②ワーキングメモリ(作業記憶)の弱さ
③衝動性・多動性によるコントロールの難しさ
このように、「上手く話せない」原因は「話す技術」や「話し方を改善する努力が足りない」のではなく、「脳の情報処理の問題」にあるのです。
よって、ご自身のせいではありません。
そして、この「脳の情報処理の問題(ADHDの特性)」を知っておくことで、ADHDの話し方の悩みを解決することができるのです。
まずは原因を知り、一緒に改善策を試していきましょう!
それでは原因について、一つずつ解説いたします💡
①前頭前野の機能の弱さ
原因の一つとして考えられるのが「前頭前野の機能の弱さ」です。
前頭前野…脳の司令塔。「話す順番を決める・話題を整理する・衝動を抑える」という役割を担っている。
ADHDの特性を持つ方はこの「前頭前野」の働きが弱いために、
話が飛ぶ、一方的に話をしてしまう、結論が見えない、要点が絞れない、空気が読めない
こういった状況を招くことに。
みなさんの中にも周りの人から「早口で、どんどん話が進んでいくからついていけない」「話が飛び、何の話をしているのか論点が分からない」と言われたご経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これはまさに、脳の司令塔である前頭前野が「話の内容をまとめる」「話したい衝動を抑える」といったことを上手くコントロールできていない状態なのです。
私もよく周りから「今この話していないよ。話飛びすぎ」と言われてしまいます…
しかも自覚があるのですが、とてもせっかち&早口なので「今なんて言った?早くてついていけない…」と困らせてしまうことも…
これらもすべて「前頭前野の機能の弱さ」から生じているもの。
「周りの空気を読んで話をする努力をしていないからだ」と、ご自身を責めないでくださいね🌷
②ワーキングメモリ(作業記憶)の弱さ
もう一つの原因が「ワーキングメモリ(作業記憶)の弱さ」です。
ワーキングメモリ…一時的に情報を頭の中に置いて、整理しながら使う力のこと。
このワーキングメモリのおかげで一般の方は、「今話していることを意識しながら、次に話すことを考える」ということができております。
しかし、ADHDの特性がある方はこのワーキングメモリの容量(脳内リソース)が狭い、もしくは上手く使えないために、
・話している途中で何を話しているのか分からなくなる
・会話の文脈を維持できない
・話してる間に脳内がパンクする(話の脱線)
こういった状態を引き起こすことに。
私自身もかなり思い当たる節があります…
話している最中にだんだんと何の話だったのか分からなくなり、「で、今何の話だっけ?」と周りをしらけさせていたこともしばしば…
これも脳内リソースの狭さのため話の内容が記憶できずに生じたもの。
このように「ワーキングメモリの低さ」もADHDが話し方で悩む原因の一つとなっております。
③衝動性・多動性によるコントロールの難しさ
ADHDの特性でもある衝動性と多動性。
これも「上手く話せない」原因の一つです。
ADHDの中でも、衝動性と多動性が強い方の会話の特徴として、
・思いついたら即、口に出してしまう
・話を最後まで聞く前に割り込んでしまう
・一気にたくさん話しすぎる
といったものがありますが、これは「脳の抑制機能(制御機能)の弱さ」から生じているのです。
つまり、「待つ」「一旦止める」という脳のブレーキが弱いために
早口になる、話が飛ぶ、まとまらない
といった話し方になってしまうのです。
「衝動性」「多動性」もADHDの特性の一つ。
話が飛んでしまうのも、思いついたことを待てずにすぐ言ってしまうのも、あなたのせいではなく、「ADHD脳の情報処理のクセ(問題)」が原因なのです。
ご自身を責めず、少しずつ改善策を試してみてくださいね。
次章では、ADHDの脳の構造にあった「会話を楽しむための改善策」についてご紹介いたします!
特性別|ADHDが会話を楽しむための「話し方改善策」3選
ここではADHDの特性別に、話し方の改善策をご紹介いたします。
①前頭前野の機能の弱さにはコレ|ズレる前提で会話を設計する
②ワーキングメモリの弱さにはコレ|ラクに会話ができる「安心ゾーン」を作る
③衝動性・多動性にはコレ|自分の話すペース(速度)を受け入れる
順に解説いたします💡
①前頭前野の機能の弱さにはコレ|ズレる前提で会話を設計する
ADHDの特性を持つ方にオススメなのが、「そもそもズレる前提で会話を設計する」ことです。
原因パートでもお伝えいたしましたが、ADHDの特性を持つ方は前頭前野の働きが弱いため、努力しても「会話がズレないようにする、飛ばないようにする」ことは難しいもの。
なので、最初から「自分の会話はズレる!これを前提に対策をする」と考え方をシフトしたほうが、ADHDにあった対策を立てやすい上に効果を実感しやすいのです。
具体的な対策としては、
・会話のテーマを一言決めてから話を始める
→例:「今から子どもの保育園について話をする」など、会話の目的を一言確認する。
これでズレた時に戻ることができる✨
・話し始める前に順番を整理してから話す
→「Aを話して→Bに進む」と頭の中で段取りを作ってみる。
・話が飛んだら、素直に「今、ズレたかも!ごめん、話戻すね」と口に出して戻す癖をつける
→ ズレること自体を恥じない方が、ラクに会話を続けられる💡
これらが挙げられます。
私が行っている工夫ポイントとしては、「会話の最中に違うテーマが頭の中に出てきたら、携帯やメモ帳に走り書きする」こと。
会話の妨げにならないように、ササっと書くのがオススメです。
そうすることで、また会話に戻ってくることができるのです!
ADHDは頭に色々と単語が湧いてきてしまうので、そのワードに引っ張られて話が脱線しがち。
ご紹介した対策を参考に、「脱線してもOK!」な環境づくりや会話に戻れる工夫をぜひ取り入れてみてくださいね✨
・話がどんどん飛んでしまう
・「何の話をしているのか分からない」と言われてしまう
・話の内容をまとめる(要約する)ことができない
②ワーキングメモリの弱さにはコレ|ラクに会話ができる「安心ゾーン」を作る
「話をしているうちに内容を忘れてしまう」「よく話が脱線してしまう」という方にオススメなのが、自分自身が安心して会話を行える「安心ゾーン(安全地帯)」を作ることです。
安心できる人、安心できる環境があることで「この人と話をするときはズレても大丈夫」と思えるようになり、脳や気持ちに余白を作ることが可能に◎
余白ができればその分、会話の内容を覚えていることができるので、結果的に「話の内容を忘れる」「話が飛ぶ」といったことを防ぐことができます。
というお声が聞こえてきそうです。
そうですよね、実際「安心できる環境を作る」というのは一朝一夕にはできないかと思います。
しかし、時間はかかりますが少しずつ対策を取っていけば、誰でも「安全地帯」を作ることは可能✨
私も会社員時代、上司や同僚から「よく話が飛ぶので何を言っているのか分からない」と言われ落ち込んでいました。
不思議なことに「わかりやすく喋ろう!」と身構えれば身構えるほど頭の中がパンクし、結果的に「何を話したいのかが分からなくなる」という事態に。
現在は在宅ワークに切り替わったことで、いい意味で一緒に仕事をする人を選べるようになったので、コミュニケーションを取ることがかなりラクになったように思います。
もちろん私も「会話をスムーズに行うための対策」を行いました。
具体的には、
・「話が脱線しやすい傾向にある」ということを予め伝えた
→一緒に働いて2、3ヶ月が経った頃、「実はADHDの特性があり、話が脱線しやすいです」と自己開示しました。そしてなんとお客さん側からも「実は俺もADHDで」というお話が!
・在宅ワークに切り替え、LINEなどのチャットツールでのやり取りがメインとなった
→視覚的には強いADHDなので、文字ベースであれば話の内容を整理でき、脱線することなく進められます✨
・「この人となら会話が脱線しても笑ってくれる」といった人との会話を増やし、自信をつける
これらの対策を行いました。
自分の特性を開示する、というのはなかなか難しいかもしれませんので、まずは「話がズレても大丈夫な人との会話を増やす」だけでもかなり自信をつけることができるかと思います。
自信がつけば、
どの場面の会話でも安心できる→脳のリソースが生まれ会話の内容を覚えていられる→会話を楽しめる
こういった効果を生み出すことに✨
ぜひ一つずつ取り組んでみてくださいね!
話しているうちに内容を忘れてしまう
よく話の内容が脱線してしまう
③衝動性・多動性にはコレ|自分の話すペース(速度)を受け入れる
衝動性や多動性の特性が強く「一方的に話をしてしまう」「早い口調でどんどん話が進んでいく、とよく言われる」という方にオススメなのが、自分の話ペースを知り受け入れること。
私も含め多くのADHDの特性を持つ方は、自分の話すスピードがどれほどのものか把握されていないかと思います。
実は、結構早い。
なんなら早すぎて自分の舌も回らず噛みまくっているのに、それにも気づかず喋っている…
以前Zoom会議の録画を聞いてみたのですが、自分の話し方が早すぎて何を言っているのか分かりませんでした…
みなさんもぜひ一度、ご自身の話すスピードを確認してみてください。
その上で効果のある対策としては以下の3つです。
・「話すときにゆっくり深呼吸をしてから言葉を出す」を習慣にする
→ 例:口を開く前に1〜2秒だけ「間」を取るだけでもスピードは落ちる。
・1文1呼吸
→一つの文章が終わるごとに、1回呼吸することを意識する。特に「句読点」は意識的に呼吸するようにする。
例:今日は良いお天気なので、(呼吸)家族分の布団を干してきました。(呼吸)
・話す前に「今日のゴールはこれだけ伝えたい」と決めておく
→ 話す内容を1〜2個に絞ると、衝動的な脱線が減りやすい。
私も始めはゆっくりと話しているものの、どんどん話すスピードが早くなり、なんなら話題もどんどんズレていきます。
1文ごとに呼吸を意識するだけで、スピードを抑えられるとともに、「あ、今この話をしていたんだな」と気づくきっかけにもなります。
ぜひ試してみてくださいね!
気づいたら1人で話しすぎている
「話が早くてついていけない」と言われる
改善策3選のまとめ
特性 | 特徴 | オススメの改善策 |
前頭前野の弱さ | 話が飛ぶ/要点がズレる | ◉ズレる前提で会話を設計する ・会話のテーマを一言決めてから話を始める・話し始める前に順番を整理してから話す ・話が飛んだら、素直に「今、ズレたかも!ごめん、話戻すね」と口に出して戻す癖をつける |
ワーキングメモリの弱さ | 話が脱線する/話の内容を忘れる | ◉安心ゾーンを作る・在宅ワークに切り替え、LINEなどのチャットツールでのやり取りがメインとなった ・「この人となら会話が脱線しても笑ってくれる」といった人との会話を増やし、自信をつける |
衝動性・多動性 | 思いついたことを即話す/早口/割り込みをしてしまう | ◉話すペースを受け入れる ・「話すときにゆっくり深呼吸をしてから言葉を出す」を習慣にする ・1文1呼吸 ・話す前に「今日のゴールはこれだけ伝えたい」と決めておく |
最後に:上手い話し方が出来ないのはあなたのせいじゃない
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回は「ADHDの話し方の原因と改善策」についてお伝えいたしました。
ADHDの話し方が一方的であったり脱線しやすいのは、「脳の構造的な問題」にあるのです。
みなさんの努力が足りないせいではありません。
そして「上手く話せない」という悩みは、ADHDの特性に合わせた工夫を知ることで改善できるのです✨
今回ご紹介した方法を一つずつ試してみて、自分に合った方法を見つけてみてくださいね。
みなさんが会話を楽しめるようになることを心から願ってやみません。
最後までお読みいただきありがとうございました!
